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大阪地方裁判所 昭和58年(行ウ)86号 判決 1985年10月25日

大阪市旭区中宮4丁目3番18号

原告

篠根茂雄

右同所

原告

篠根タヱ子

右両名訴訟代理人弁護士

鍛冶川善英

和田栄重

大阪市旭区大宮1丁目1番25号

被告

旭税務署長 西村和典

右指定代理人

笠原嘉人

外4名

主文

本件訴え中,被告が昭和57年6月24日付けでした,原告篠根茂雄の昭和55年分の所得税の更正処分(但し,異議決定による一部取消後のもの)につき,課税分離短期譲渡所得金額2,450万9,000円の取消しを求める部分,及び原告篠根タヱ子の昭和55年分の所得税の更正処分(但し,裁決による一部取消後のもの)につき,課税分離長期譲渡所得金額3,160万7,000円の取消しを求める部分をいずれも却下する。

原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

一  当事者の求めた裁判

1  原告ら

被告が昭和57年6月24日付けで原告篠根茂雄に対してした昭和55年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(但し,いずれも異議決定による一部取消後のもの。)並びに同日付で原告篠根タヱ子に対してした昭和55年分の所得税の更正処分及び無申告加算税の賦課決定処分(但し,いずれも裁決による一部取消後のもの。)は,いずれもこれを取消す,訴訟費用は被告の負担とする,との判決。

2  被告

(一)  本案前の答弁

主文第一,第三項と同旨の判決

(二)  本案の答弁

原告らの請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする,との判決

二  原告らの請求原因

1  原告茂雄が昭和55年分の所得税についてした修正申告,これに対し被告がした更正処分,過少申告加算税の賦課決定処分及び異議決定並びに国税不服審判所長がした裁決,原告タヱ子(原告茂雄の妻)が昭和55年分の所得税についてした期限後申告,これに対し被告がした更正処分,無申告加算税の賦課決定処分及び異議決定並びに国税不服審判所長がした裁決の経緯は,別表1,2及び各付表記載のとおりである。

2  原告らは,昭和55年中に別紙物件目録一記載の土地建物(以下「世田谷区の土地建物」という。)を他に譲渡して,譲渡代金の一部を宗教法人旭基督教会に寄付し,原告茂雄は従前居住していた同目録二記載の土地建物(以下「旭区の土地建物」という。)を転居後3年内に他に譲渡したものであって,原告らには所得税法による寄付金控除が,原告茂雄には租税特別措置法(昭和56年法律13号による改正前以下「措置法」という。)による居住用財産の譲渡特別控除が認められるべきであるのに,原告茂雄に対する更正処分(異議決定による一部取消後のもの,以下同じ。)には,居住用財産の譲渡所得の特別控除を認めず,課税分離短期譲渡所得金額を過大に認定したほか,寄付金控除を認めなかった違法があり,したがって,これに基づく過少申告加算税の賦課決定処分(右同)も違法であり,原告タヱ子に対する更正処分(裁決による一部取消後のもの,以下同じ。)には,課税分離長期譲渡所得金額を過大に認定したほか,寄付金控除を認めなかった違法があり,したがって,これに基づく無申告加算税の賦課決定処分(右同)も違法である。

3  よって,原告らは被告に対し,原告茂雄に対する更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに原告タヱ子に対する更正処分及び無申告加算税の賦課決定処分の各取消しを求める。

三  被告の本案前の主張

原告茂雄の昭和55年分の所得税の修正申告書(昭和56年9月21日付のもの)によれば,課税分離短期譲渡所得金額は2,450万9,000円となっているが,右所得金額は国税通則法(以下「通則法」という。)23条1項による更正の請求に基づいて取消されない限り修正申告の内容どおりに確定するところ,同原告は法定の期間内に更正の請求をしなかったから,右所得金額を争うことができない。したがって,本件訴え中被告が同原告に対してした更正処分につき右所得金額の取消しを求める部分は,不適法として却下されるべきである。

原告タヱ子の昭和55年分の所得税の期限後申告書によれば,課税分離長期譲渡所得金額は3,160万7,000円となっているところ,同原告も右期限後申告につき法定の期間内に更正の請求をしなかったから,原告茂雄と同様の理由により,本件訴え中被告が原告タヱ子に対してした更正処分につき右所得金額の取消しを求める部分は,不適法として却下されるべきである。

四  被告の本案前の主張に対する原告らの認否及び主張

1  原告茂雄が修正申告書を,原告タヱ子が期限後申告書をそれぞれ被告に提出したことは認めるが,その効果は争う。

2  右修正申告書及び期限後申告書は,いずれも原告らが錯誤に基づいて提出したもので,右錯誤は客観的に明白,かつ,重大であり,更正の請求手続以外に是正の途がないとすれば納税者の利益を著しく害するから,民法95条により右各申告はいずれも無効である。

3  すなわち,昭和56年5月ころ被告の担当官から原告茂雄に対し原告らの不動産譲渡所得につき申告もれの理由の照会があり,その後原告茂雄は2,3回被告の担当官と交渉したが話合いがつかなかったところ,同年9月21日右担当官は同原告に対し「寄付金控除については専門ではないので国税局やその上の役所の方へ行って話をして下さい。ついてはこの書類を提出してもらいたいのでサインしてほしい。」と言って,中の数字等が既に記入された修正申告書及び期限後申告書を示し,住所氏名の記入と捺印を求めたので,同原告は右各書類を国税局へ提出するためのものと誤信し,1通に自己の,他の1通に原告タヱ子の住所氏名を記入しそれぞれ捺印して右担当官に渡し,同人からその控各1通を受け取った。

このように原告茂雄は,右各書類を当日初めて示され,その内容の説明も一切受けず,担当官を信用して同人の言うままに行動し,右各控の内容も改めて検討せずに保管していたが,原告らがもし右各申告書記載の税額を支払わねばならないことを知っておれば,右各申告書を提出しなかったものである。

五  原告らの右主張に対する被告の認否及び反論

1  原告らの右主張はすべて争う。原告茂雄の修正申告書及び原告タヱ子の期限後申告書は,いずれも原告らの意思に基づいて記入,提出されたもので,原告らの錯誤無効の主張は失当である。

2  すなわち,被告は昭和56年5月から原告らの譲渡所得の一部申告もれについて調査を進めてきたが,被告の部下職員坂本俊昭は,右調査結果に基づき同年7月4日来署した原告茂雄に対し,(一)原告らの世田谷区の土地建物の譲渡による所得については申告と納税を要すること,(二)原告らの旭基督教会に対する寄付金は寄付金控除の対象にならないこと,(三)原告茂雄の旭区の土地建物の譲渡による所得については居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用がないこと等から,原告茂雄には修正申告の原告タヱ子には期限後申告の各必要がある旨説明した。その結果,原告茂雄は旭区の土地建物については,当初右特別控除の適用を主張していたが,最終的には右特別控除の適用がないことを了解し,旭基督教会に対する寄付金については,寄付金控除の対象とならないことを終始納得しなかった。

そこで,坂本は同年9月21日来署した原告茂雄に対し,修正申告,期限後申告を求め,寄付金控除の点につき所得税担当職員へ問い合わせたり,大阪国税局の担当部局へも電話照会しそのやり取りを聞かせるなどしたが,依然納得が得られなかったので,やむを得ず原告らの意向を汲み寄付金控除をした計算に基づいて修正申告書及び期限後申告書の記入を行い,これを同原告に呈示しそれぞれ記名捺印を得たものである。

その際,坂本は原告茂雄に対し,原告らの申告に対し寄付金控除の否認を理由とする更正処分等が行われることは必至である旨告知し,申告書の提出に伴い納付すべき税額のほかに,加算税の賦課と延滞税の徴収があること及びその概算額についても具体的に説明したところ,同原告から,寄付金控除が認められなかった場合の不服申立手続について質問を受けたので,異議申立,審査請求の手続を説明し,訴訟による救済手段もあることを教示している。

3  原告茂雄は,旭基督教会の代表役員で同教会が経営していた幼稚園の園長でもあり,社会的にも相当な地位にあって十分な税務知識を有し,別表1記載のように昭和55年分の所得税の確定申告をした直後,違算に気付き修正申告をする等手続面についても熟知している。かかる同原告が申告書の内容の説明を全く受けず,十分検討もしないまま申告書に記名捺印をしたとは到底考えられない。

六  原告らの請求原因に対する被告の認否及び主張

1  請求原因1の事実は認めるが,同2,3の主張は争う。

2  昭和55年分の原告茂雄の分離短期譲渡所得金額及び原告タヱ子の分離長期譲渡所得金額の計算内訳は別表3,4記載のとおりであり,その算出根拠は次のとおりであるから,いずれもその範囲内でされた原告らに対する各更正処分には,原告茂雄の課税分離短期譲渡所得金額及び同タヱ子の課税分離長期譲渡所得金額を過大に認定した違法はなく,これらを前提としてされた原告らに対する各加算税の賦課決定処分にも違法はない。

3  世田谷区の土地建物についての譲渡所得金額

(一)  譲渡価額

原告らは昭和55年3月12日世田谷区の土地建物を株式会社磐光実業に7,400万円で売却し,同日700万円を,同年6月13日6,700万円を各受領したところ,右土地は原告茂雄名義,右建物は原告タヱ子名義であり,右土地につき原告茂雄は底地の権利を,原告タヱ子は借地権を有していたので,譲渡価額として譲渡代金の30%の2,220万円を原告茂雄に,70%の5,180万円を原告タヱ子に帰属させ,更に後記のように同原告が猿田昭から取得した転借権相当部分の価額450万円を別途計上した。

(二)  取得価額

原告茂雄は昭和45年2月17日右土地(底地)を岩瀬弘蔵から241万6,800円で買い受け,登記費用及び不動産取得税として33万5,000円を支出したから,右代金額及び附帯費用をもって取得価額とした。

原告タヱ子は昭和44年6月30日右土地の借地権と右建物を亡父から相続により取得したから,措置法31条の4第1項により譲渡収入金額の5%の236万5,000円をもってその取得価額とした。なお,右土地の借地権の一部は,猿田昭に転貸されていたが,原告タヱ子は昭和51年4月14日同人を立ち退かせ,昭和55年5月30日転借権消滅の対価として450万円を支出したから,転借権相当部分の取得価額は前記譲渡価額とともに450万円とした。とした。

(三)  譲渡に要した費用

原告らは右土地建物を譲渡するため東急不動産株式会社に対し仲介手数料220万円を支払ったので,譲渡に要した費用は前記譲渡価額の割合により按分した。

(四)  特別控除額

原告茂雄の右土地(底地)の譲渡による所得は,措置法32条1項の短期譲渡所得となるので特別控除額はないが,原告タヱ子の右土地の借地権及び右建物の譲渡による所得は,前記転借権相当部分を除き措置法31条1項の長期譲渡所得となるので,同条2項により特別控除額100万円を控除した。

4  旭区の土地建物についての譲渡所得金額

(一)  譲渡価額

原告茂雄は,旭区の土地建物を譲渡するに当たり,建物が分筆前の旭区中宮4丁目75番宅地(111.39m2)上にあるものとして,昭和55年3月14日右土地建物を牛房明に3,400万円で売却し,同日手付金400万円を受領したが,右建物が実際は別紙図面のA図記載の点線のように,75番の土地と隣接の中島寅雄所有の76番宅地にまたがって建てられていることが判明し,買主は建付地を現況のまま転売する目的であったため,契約の履行に支障を生じた。そこで同原告は同B図記載のとおり,75番の土地を75番5,同番6,同番7の3筆に分筆し,中島との間で75番5の土地を76番の土地から分筆された76番2の土地と交換することにより,牛房の意図した形のとおり旭区の土地建物を同人に引き渡した上,昭和55年5月2日売買残代金3,000万円を牛房から受領したが,右経緯から取引が大幅に遅れたため100万円を値引きし,結局譲渡価額は3,300万円となった。

中島との右土地交換については,交換も譲渡に含まれるから,原告茂雄は中島に対し75番5の土地を譲渡したことになり(別表3で「旭区の交換譲渡資産」として別に掲げた。),その譲渡価額は所得税法36条1項かっこ書及び同条2項により,交換により取得した76番2の土地の時価によるべきところ,牛房との売買契約では土地1坪当たりの取引価額が100万円であり,後記中島からの境界部分の買受価額も1坪当たり100万円であることから,76番2の土地の時価を1坪当たり100万円とし,右譲渡価額を1,383万6,350円と算出した。

(二)  取得価額

原告茂雄は昭和45年6月30日75番の土地建物を財団法人大阪クリスチャンミッション維持財団から650万円で買い受けているが,当時の鑑定評価によれば右土地は618万円,右建物は44万円であるから,その割合に基づき右買入価額を土地606万7,976円と建物43万2,024円とに区分した上,土地については75番6,7の土地分359万8,237円と75番5の土地分246万9,739円とに区分してそれぞれの取得価額とし,建物については所得税法38条2項1号により,右金額から昭和45年5月から同55年6月までの間の建物償却費の累積額10万8,870円を控除した32万3,154円を残存取得価額とした。

旭区の土地の取得価額としては,右以外に76番2の土地の交換取得価額として前記75番5の土地の譲渡価額と同額を計上し,更に前記交換に際し,原告茂雄が76番1の土地の76番2の土地との境界部分0.42坪を中島から買い取った価額42万円と,同原告が支出した登録免許税額12万9,200円の2分の1である6万4,600円を算入した。

(三)  譲渡に要した費用

原告茂雄が牛房との75番の土地建物の売買に際しクラレ不動産に支払った仲介手数料108万円及び司法書士坂内敏昭に支払った手数料1万9,500円のうち住所変更及び根抵当権抹消の費用を除いた5,300円を旭区の土地建物の譲渡に要した費用に算入し,前記土地交換に際し支出した登記免許税額12万9,200円の2分の1である6万4,600円を75番5の土地の譲渡に要した費用に算入した。

(四)  原告茂雄の旭区の土地建物及び75番5の土地の譲渡による所得は,措置法32条1項の短期譲渡所得となるので特別控除額はない。

(五)  原告茂雄の旭区の土地建物の譲渡による譲渡所得金額については措置法35条1項に規定する居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用ない。

すなわち,原告茂雄は原告ら夫婦が旭区の建物の住居表示である旭区中宮4丁目8番22号から同区中宮4丁目3番18号に(以下「新住所」という。)昭和55年4月1日転居したとして,同日大阪市旭区長に転居届を提出したが,以下の事実からすると,原告らが同日まで旭区の建物に居住していたとは到底考えられず,かえって昭和51年7月ないし8月には新住所に転居したものと認められる。

(1) 旭区の建物における上水道の使用量及び料金額は別表5記載のとおりであって,昭和51年12月以降その使用実積はほとんどなく,基本料金を徴収されているのみであり,大阪市水道局の担当者は昭和53年5月15日現場で右建物が空屋状態であることを確認している。

(2) 旭区の建物における都市ガスの使用量及び料金額は別表6記載のとおりであり,昭和51年7月26日には閉栓されている。

(3) 旭区の建物に設置されていた原告茂雄名義の電話(954局3518番)は昭和51年8月5日新住所に移転されている。

(4) 原告茂雄は昭和44年9月株式会社三菱銀行大阪支店に開設した普通預金口座について,昭和53年12月15日連絡場所として新住所を届出ている。

(5) 原告らは同年12月20日株式会社住友銀行千林支店において総合口座を開設したが,その届出住所はいずれも新住所である。

このように,原告茂雄が旭区の建物を居住の用に供さなくなった日時は昭和51年7月ないし8月であり,原告茂雄が旭区の土地建物を牛房に譲渡した日時は前記のとおり昭和55年5月2日であるから,右譲渡は同原告にとって措置法35条1項に規定する「家屋が当該個人の居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間」の譲渡には該当しない。

5  原告らは,旭基督教会に対してした寄付は学校法人恵泉学園設立のためにしたものであるから,寄付金控除をすべきであると主張するが,本件寄付金は,原告らの課税所得金額の計算上,寄付金控除の対象とならない。

(一)  旭基督教会は所得税法78条2項3号,所得税法施行令(昭和56年政令71号による改正前,以下同じ)215条に定める法人に該当しないし,恵泉学園の設立が許可されたのは昭和56年11月21日であって,本件寄付がされた昭和55年6月16日当時には設立登記はもちろん,設立許可もされていず,右認可と本件寄付との間には1年半余の隔りがあるから,右条文を準用することはできない。

(二)  資金の流れから見ても,原告らの世田谷区の土地建物の譲渡代金のうち7,100万円が原告茂雄名義の三菱銀行森小路支店の普通預金口座に入金された後,昭和55年6月16日に5,431万7,187円が出金されて同日旭基督教会名義の住友銀行千林支店の普通預金口座に入金された上,即日出金して右教会の借入金の返済に充当されているところ,右借入金の発生原因は,右教会が昭和50年3月28日川商不動産株式会社からマンション「ドルミ城北」の2階部分(227.38m2)を5,200万円で買い受けた際に他の銀行から借り入れた金員を借継ぐために,住友銀行千林支店から昭和53年10月28日5,000万円,同年11月30日1,000万円を各借り入れたものである。そして,右マンション2階部分が恵泉学園に譲渡された事実はないから,結局本件寄付が右学園のためにされたものということはできない。

七  被告の主張に対する原告の認否及び反論

1  被告の主張2の事実は争う。

2  同3の(一)の事実中,原告らが世田谷区の土地建物を7,400万円で売却したこと,右土地が原告茂雄の,右建物が原告タヱ子の名義であったこと,同(二)の事実中,右土地の買受代金と付帯費用の額,原告タヱ子が右土地の転借人猿田に450万円を支払い同人を立退かせたこと,同(三)の事実中,原告らが仲介手数料220万円を支出したことは認めるが,その余は争う。

原告らは,世田谷の土地建物の譲渡費用として,被告主張額以外に,司法書士の手数料1万2,000円,猿田との立ち退き交渉のための交通費,宿泊費,弁護士費用合計176万8,000円を支出している。

3  同4の(一)事実中,原告茂雄が被告主張の経過で分筆,交換等が行われた上,昭和55年5月2日旭区の土地建物を3,300万円で売却したこと,(二)の事実中,右土地建物の買受代金と登録免許税の額,(三)の事実中,仲介手数料,司法書士手数料,登録免許税の額,(五)の事実中,原告茂雄が被告主張の転居届を提出したこと及び(3)ないし(5)の各事実は認めるが,その余は争う。

4  同5の(一)の事実中,恵泉学園の設立年月日,同(二)の事実中,世田谷区の土地建物の譲渡代金のうち7,100万円が被告茂雄名義の銀行預金口座に入金されてから,5,431万7,187円が旭基督教会名義の銀行預金口座に入金されるまでの経過は認めるが,その余は争う。

5  原告茂雄は,旭区の土地建物を取得した昭和45年6月から新住所に転居した昭和55年3月31日までの間,以下に述べるように旭区の建物を生活の本拠として居住の用に供していたから,原告茂雄の旭区の土地建物の譲渡による譲渡所得金額については居住用財産の譲渡所得の特別控除が適用されるべきである。

(一)  原告茂雄は旭基督教会の牧師として布教活動を行うほか,同教会代表役員,同教会経営の幼稚園園長を兼務し,さらに社会福祉や宣教関係で多くの役職を勤め出張等の多い多忙な生活を送っていたものであり,原告タヱ子も昭和49年3月に右幼稚園の副園長に就任して以来,昼間は本件家屋を留守にすることが多かったが,原告らは転居するまで,夜は旭区の建物に帰宅し,その使用する自動車も右建物に付属する車庫に入れていた。

(二)  原告らは上水道をかつては大半炊事用に使用していたが,昭和49年4月以降は軽い朝食を除きほとんど外食ですませ,昭和52年ころからは夜帰宅してお茶をわかす程度となり,また便所も水洗式ではなかった。更に都市ガスについては,炊事用には備付けの大型石油こんろで用が足りたのでほとんど使用せず,暖房用としても原告タヱ子がピアノ教室を開いていた昭和51年冬までは使用量が多かったもののその後は使用しなくなり,同年7月ころガス管が腐蝕して取替が必要となった機会に,炊事は石油こんろで代用できるため閉栓にしてもらった。

(三)  原告茂雄名義の電話の移設は,旭区の建物が昼間留守となるため,原告らが勤務する新住所所在の幼稚園にビジネスホーンを設置した際これにまとめるべく移設したものであり,しかも右電話は無線電話であって旭区の建物にいても受発信できたから,何ら不便はなかった。

なお,原告茂雄が三菱銀行大阪支店の普通預金口座について連絡場所として新住所を届出で,原告らが住友銀行千林支店に開設した総合口座について新住所を届出住所としたのは,昼間は原告らが専ら新住所所在の幼稚園において勤務し,旭区の建物には不在であったからにすぎない。

6  原告らは,世田谷区の土地建物の譲渡代金の一部である6,552万円について,昭和55年6月16日原告茂雄が1,965万6,000円,原告タヱ子が4,586万4,000円を学校法人恵泉学園設立のため旭基督教会に寄付したものであるから,右寄付金は所得税法78条2項3号,同法施行令215条1項3号により,ないしはこれに準じて寄付金控除の対象とすべきである。

すなわち,原告茂雄は旭基督教会の代表委員で同教会が経営していた幼稚園の園長であったが,昭和50年4月ころ右幼稚園の設置主体を学校法人とすべく,恵泉学園設立についての認可申請をしたが,当時右幼稚園の会計(独立採算制)上負債が多かったため受理されなかったので,原告らは昭和55年6月16日世田谷区の土地建物の譲渡代金7,400万円から必要経費848万円を控除した6,552万円を一旦旭基督教会に入金した上,そのうち約5,432万円を幼稚園の住友銀行千林支店に対する長期借入金の返済に,残りの約1,120万円を右幼稚園の右教会に対する長期借入金の返済にそれぞれ充当した結果,右幼稚園の負債が減少したため,昭和56年11月21日恵泉学園の設立が認可されるに至った。

このように本件寄付は,学校法人たる恵泉学園の設立が認可されていなかったため,幼稚園の設置主体である旭基督教会に対してなされ,右寄付があったればこそ恵泉学園の設立が認可されたのであるから,その実質は学校法人設立のためになされたものにほかならない。

八  証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから,これを引用する。

理由

一  被告の本案前の主張について

1  昭和56年9月21日に原告茂雄が修正申告書を,同タヱ子が期限後申告書をそれぞれ別表1,2の該当欄のとおり記載して被告に提出したことは当事者間に争いがないところ,原告らは右各申告書の提出は錯誤に基づくものである旨主張するのでこの点について検討するに,成立に争いのない甲第1,2号証,乙第3,4号証の各1,第6号証の1ないし4,第7号証,証人坂本俊昭の証言及び原告茂雄本人尋問の結果(但し,後記措信しない部分を除く。)並びに弁論の全趣旨を総合すると次の事実が認められ,右認定に反する証拠はない。

(一)  原告らは世田谷区の土地建物の譲渡所得につき,原告茂雄は旭区の土地建物の譲渡所得につき,いずれも昭和55年分の所得税の申告をしなかったため,被告は昭和56年6月中旬ころ右各譲渡所得の調査を開始し,同年7月初旬ころほぼ終了した。

(二)  被告の部下職員で資産税担当の坂本俊昭は,右調査結果に基づき,同年7月4日原告茂雄に来署を求め,原告らの譲渡所得についてはすべて申告が必要であり,旭基督教会に対する寄付金については寄付金控除の適用はなく,原告茂雄の旭区の土地建物の譲渡所得については居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用はないから,原告茂雄には修正申告の,妻の原告タヱ子には期限後申告の各必要がある旨説明した。その結果,原告茂雄は原告らの譲渡所得についてすべて申告を要することは了解したものの,右寄付金控除と特別控除が適用されないことについては右説明に納得せず,同年9月4日の話合いにおいても平行線のままで,修正申告書,期限後申告書が提出されるに至らなかった。

(三)  坂本は同年9月21日来署した原告茂雄に対し,前回同様の説明を約2時間にわたって行うとともに,寄付金控除の適否につき所得税担当職員へ問い合わせたり,大阪国税局の担当部局へ電話照会してそのやりとりを同原告に聞かせるなどして修正申告,期限後申告を求めたが,同原告は,特別控除の不適用については特に異議を述べなかったものの,寄付金控除の不適用についてはなお納得しなかった。そこで坂本は,原告茂雄に税理士がついておらず,税額の計算も複雑であったことから,やむを得えず前記調査結果及び原告茂雄の説明に基づき,原告茂雄につき特別控除を行わず,原告らにつき寄付金控除をした計算に従って修正申告書及び期限後申告書の記入を行い,これを同原告に呈示してその確認を得たうえ,原告らの住所氏名の記入と捺印を求めたところ,原告茂雄は修正申告書については本人として,期限後申告書については原告タヱ子の代理人としてこれに応じ,右申告書の各控を受領した。

その際,坂本は原告茂雄に対し,原告らの右各申告に対し寄付金控除の否認を理由とする更正処分がなされることは確実であり,これに伴い納付すべき税額のほかに加算税の賦課と延滞税の徴収があること及びその概算額について具体的に説明したところ,同原告から寄付金控除が否認されるのは納得できないとして不服申立手続につき質問があったので,異議申立,審査請求及び訴訟による救済手段の手続を教示した。

(四)  原告茂雄は,当時旭基督教会の代表委員で同教会経営の幼稚園の園長でもあり,自己の昭和55年分の所得税の確定申告書を昭和56年3月13日に提出した後,申告額につき違算があったとして,同年4月13日に修正申告手続をしている。

2  右認定事実によれば,原告らが本件各申告書を錯誤に基づいて提出したものとは認めがたく,かえって本件各申告書は,原告茂雄が(原告タヱ子の期限後申告については代理人として)その記載内容を確認した上,原告らの意思に基づいて提出されたものというべきであり,原告茂雄本人の尋問の結果中これに反する部分はにわかに措信できない。

3  そうすると,原告茂雄の修正申告書に記載の課税分離短期譲渡所得金額2,450万9,000円は,通則法23条1項により更正の請求に基づいて取消されない限り修正申告の内容どおりに確定するところ,同原告が法定の期間内に右更正の請求をしたことを認めるに足りる証拠はなく,右更正の請求を通則法75条1項による異議申立により代用することはできないというべきであるから,同原告において右所得金額を争うことはできない。したがって,本件訴え中被告が同原告に対してした更正処分につき右所得金額の取消しを求める部分は,不適法といわざるをえない。

また,原告タヱ子の期限後申告書に記載の課税分離長期譲渡所得金額3,160万7,000円についても,同原告が法定の期間内に更正の請求をしたことを認めるに足りる証拠はないから,原告茂雄と同様の理由により,本件訴え中被告が原告タヱ子に対してした更正処分につき右所得金額の取消しを求める部分は,いずれも不適法である。

二  そこで,本案について検討するに,請求原因1の事実及び原告らが世田谷区の土地建物を,原告茂雄が旭区の土地建物を他に譲渡したことは当事者間に争いがないので,まず右各譲渡にかかる譲渡所得金額について判断する。

1  世田谷区の土地建物についての譲渡所得金額

(一)  原告らが右土地建物を7,400万円で売却したこと,右土地が原告茂雄の,右建物が原告タヱ子の名義であったこと,右土地の買受代金と付帯費用の額,原告タヱ子が右土地の転借人猿田に450万円を支払い同人を立退かせたこと,原告らが右土地建物売却につき仲介手数料220万円を支出したことは当事者間に争いがなく,右事実に成立に争いのない乙第8ないし第13号証及び弁論の全趣旨を総合すると,右土地建物の譲渡についての譲渡価額,取得価額,譲渡に要した費用は,原告茂雄,原告タヱ子別に,被告主張のとおり算定されることが認められる。

原告らは,譲渡に要した費用として,右以外に司法書士の手数料1万2,000円,猿田との立ち退き交渉に要した諸費用合計176万8,000円を支出したと主張するが,これを認めるに足りる証拠がない。

(二)  右によれば,原告茂雄の右土地(底地)の譲渡による所得は措置法32条1項の短期譲渡所得に,原告タヱ子の右土地の借地権及び右建物の譲渡による所得(転借権相当部分を除く。)は同法31条1項の長期譲渡所得になり,同原告については同条2項により100万円の特別控除があるから,別表3,4記載のとおり,原告茂雄の分離短期譲渡所得金額は1,878万8,200円,原告タヱ子の分離長期譲渡所得金額は4,239万5,000円である。

2  旭区の土地建物についての譲渡所得金額

(一)  原告茂雄が被告主張の経過で分筆,交換等が行われた上,昭和55年5月2日右土地建物を3,300万円で売却したこと,右土地建物の買受代金と登録免許税の額,売却に伴う仲介手数料,司法書士手数料,登録免許税の額については当事者間に争いがなく,右事実に成立に争いがない乙第14ないし第28号証及び弁論の全趣旨を総合すると,右土地建物の譲渡とこれに関連する75番5の土地の交換についての譲渡価額,取得価額,譲渡に要した費用は,被告主張のとおり算定されることが認められ,これに反する証拠はない。

右によれば,原告茂雄の右土地建物及び交換土地の譲渡による所得は短期譲渡所得になる。

(二)  そこで,右譲渡所得につき措置法35条1項により居住用財産の譲渡の特別控除が適用されるかどうかについて検討する。

原告ら夫婦が旭区の建物の住居表示である旭区中宮4丁目8番22号から新住所の同区中宮4丁目3番18号に昭和55年4月1日転居したとして,原告茂雄が同日大阪市旭区長に転居届を提出したこと,旭区の建物に設置されていた同原告名義の電話(954局3518番)が昭和51年8月新住所に移転されたこと,同原告が三菱銀行大阪支店に開設していた普通預金口座につき昭和53年12月15日連絡場所として新住所を届出で,原告らが同月20日住友銀行千林支店に総合口座を開設した際の届出住所がいずれも新住所であったことは当事者間に争いがなく,右事実に成立に争いのない乙第30ないし第32号証,第37号証,第40号証,第68ないし第70号証,第84号証及び原告茂雄本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すると,原告らは昭和30年3月東京都中野区から大阪市旭区中宮町6丁目75番地(旭区の建物の所在地の旧称,昭和46年9月1日住居表示実施により旭区中宮4丁目8番22号となった。)に転入したこと,原告茂雄は翌4月から旭基督教会の牧師に就任し,同教会の代表委員をする傍ら同教会が経営する旭基督教会幼稚園の園長を勤め,原告タヱ子も昭和49年3月副園長となったこと,幼稚園の園舎は旭区中宮4丁目15番地4ほかの借地約300坪(住居表示は4丁目3番18号)にあったが,同教会が昭和45年7月頃右土地を購入した後,同教会と川商不動産株式会社との間で,同会社が右土地上に建築する園舎と共同住宅につき同教会が地上権を設定して園舎と等価交換する旨の契約が成立したこと,右契約に従い昭和49年8月鉄筋コンクリート陸屋根造4階建の建物が新築され,1階部分の園舎約472m2を同教会が取得した上,幼稚園を仮園舎から移転させ園舎としての使用を開始したこと,同教会は更に幼稚園関係の集会所とするため,昭和50年3月28日川商不動産から右建物の2階部分のうち5室を買い受けたが,その際原告らも2階部分の残り4室を買い受け,うち3室(201,208,209号室)を原告茂雄名義に,他の1室(202号室)を原告タヱ子名義としたこと,原告らは現在は201号室(60.21m2)に居住し,他の3室は右集会所と共に幼稚園関係の用に供されていること,旭区の建物における昭和50,51年当時の上水道,都市ガスの使用量及び料金額は別表5,6記載のとおりであって,上水道は昭和51年8月から使用量が激減し,同年12月以降は使用実績がなく,基本料金を徴収されているのみであり,大阪市水道局の担当者は昭和53年5月15日現場で右建物が空屋状態であること確認しており,また都市ガスは昭和51年7月26日に閉栓されていること,なお原告の母清水アイは昭和46年3月から原告らと同居していたが,昭和51年5月1日東京都世田谷区に転出していること,以上の事実が認められ,これに反する証拠はない。

ところで,措置法35条1項に規定する「個人が,その居住の用に供している家屋」とは,その者が一時的な利用目的以外で生活の拠点として利用している家屋をいい,これに該当するか否かはその者や配偶者等の日常生活の状況その他の事情を総合的に斟酌して決すべきであり,「居住の用に供されなくなった日」というのも,同様の趣旨から生活の拠点として利用されなくなった日を意味するものと解されるところ,右事実を総合すると,原告らは昭和51年7,8月ころには生活の拠点を旭区の建物から新住所に移転したものと推認することができ,したがって,原告茂雄が旭区の建物を居住の用に供しなくなったのは,転居届の記載にかかわらず,昭和51年7,8月ころであったというべきである。

原告らは,新住所に転居したのは転居届どおり昭和55年4月1日であり,それまでは旭区の建物を生活の本拠として居住の用に供していたとして,その事情をるる主張し,原告本人もこれに沿う供述をしているが,仮に原告らが昭和51年7,8月ころ以降にも旭区の建物を使用していたとしても,前記認定事実に照らせば右使用は生活の本拠としてのものとは認めがたいから,右供述は採用できない。

そうすると,原告茂雄が旭区の土地建物を他に譲渡したのは昭和55年5月2日であるから,右譲渡は同原告にとって措置法35条1項所定の居住用財産の譲渡の要件に該当せず,したがって,右譲渡所得につき同条所定の特別控除が適用されないことは明白である。

(三)  以上によれば,別表3記載のとおり,原告茂雄の旭区の土地建物及び交換土地の譲渡による分離短期譲渡所得金額は1,367万2,359円及び1,130万2,011円である。

三  次に,原告らの旭基督教会に対する寄付が原告らの課税所得金額の計算上,寄付金控除の対象となるかどうかについて検討する。

1  原告らは,世田谷区の土地建物の譲渡代金のうち6,552万円につき,昭和55年6月16日原告茂雄が1,965万6,000円,原告タヱ子が4,586万4,000円を学校法人恵泉学園設立のため旭基督教会に寄付したと主張し,乙第3号証の2,第4号証の3にはこれに符合する記載がある。そして,右譲渡代金のうち7,100万円が原告茂雄名義の三菱銀行森小路支店の普通預金口座に入金された後,右同日に5,431万7,187円が出金されて同日右教会名義の住友銀行千林支店の普通預金口座に入金されたことは当事者間に争いがないが,これを超えて原告ら主張の金員全額が現実に右教会に入金されたとの点については,本件の全証拠によるも認めがたく,原告ら各別の金額についてもこれを明らかにする資料がない。そこで,以下右5,431万7,187円が原告らの右教会に対する寄付金であるとして,寄付金控除の適用の有無を考察することとする。

2  ところで,所得税法78条2項3号は,同法の別表第一第一号に掲げる法人その他特別の法律により設立された法人のうち,教育又は科学の振興,文化の向上,社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして同法施行令215条で定めるもの(試験研究法人等)に対する当該法人の主たる目的である業務に関連する寄付金について,寄付金控除をする旨定めているが,旭基督教会が右試験研究法人等に該当しないことは明らかである。

3  原告らは,本件寄付は学校法人恵泉学園の設立のためになされたものであるから,所得税法78条2項3号,同法施行令215条1項3号に準じて寄付金控除の対象とすべきである旨主張する。

しかしながら,仮に本件寄付が実質上右学校法人の設立のためになされたとの前提に立っても(なお,右法人の設立認可が昭和56年11月21日になされたことは当事者間に争いがない。)所得税法78条2項3号は2号の場合と異なり,設立後の試験研究法人等に対する寄付金に限る趣旨であることが明らかであり,これを拡張して解釈するときは,当該金員が真実当該法人設立のために支出されたか否かの判定が困難となり,ひいては不誠実な納税者による制度濫用の危険を招来することになるから,本件寄付を右学校法人に対する寄付として寄付金控除の対象とすることもできないというべきである。

四  以上によれば,原告茂雄の昭和55年分の分離短期譲渡所得金額は別表3記載のとおり合計4,376万2,570円,原告タヱ子の分離長期譲渡所得金額は同表4記載のとおり4,239万5,000円であり,原告らの給与所得金額,不動産所得金額,寄付金控除以外の所得控除額が別表1,2記載のとおりであることは当事者間に争いがないから,右の範囲内でされた原告らに対する各更正処分には,原告茂雄の課税分離短期譲渡所得金額及び原告タヱ子の課税分離長期譲渡所得金額を過大に認定した違法はなく,これらを前提としてされた原告茂雄に対する過少申告加算税の,原告タヱ子に対する無申告加算税の各賦課決定処分にも違法はない。

五  してみると,本件訴え中,被告が原告茂雄に対してした更正部処分につき,課税分離短期譲渡所得金額2,450万9,000円の取消しを求める部分,及び原告タヱ子に対してした更正処分につき,課税分離長期譲渡所得金額3,610万7,000円の取消しを求める部分はいずれも不適法であるからこれを却下し,原告らのその余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民訴法89条,93条をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 青木敏行 裁判官 古賀寛 裁判官 松田亨)

<以下省略>

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